ひとと木材の物語
Vol.01 井上

天然木曽桧を専門

 

天然木曽桧を専門とし、丸太原木から製材を行う株式会社井上の社長さんを訪ねる。

伺ったときは、社長自らフォークリフトに乗って作業。

12月にも関わらず小春日和の陽気で天気が良く、材を天日干しする絶好の日。

建具用材として曳いた製品に均一に日があたるよう規則正しく並べている最中。

一枚一枚干してある製品が美しく並び、作り手の丁寧さが感じられる風景だった。

 

手間と時間を惜しまず作る製品は、製品市に出展すれば、賞を取る。

分業はせず、原木から製品まで一貫した作業で製品を一気に作り上げたもの。

天然国有林 大滝材

原木は天然木曽桧を原木市で目利きし仕入、住宅用材、柾平、神具、仏具用材、各種木工用材木取り製品を扱う。

株式会社となって50年余り、製材業を営む会社の事務所入口に掲げられた社名は、もちろん桧板で社名が書かれていた。

そこで、会社ロゴにもなっている屋号「丸五」の話を聞く。

現社長の祖父にあたる「五郎」さんが、大正時代から「丸五」の創業者。

その頃は、製材業ではなく米屋だったそう。

そして、昭和初期から父である「五八」さんが、製材業を行い「丸五」を継ぎ、今の社長に続いている。

「大正時代からある蔵、米屋時代の米蔵に「丸五」印、おそらく祖父の「五」をとって丸五となりその後、おやじは名前と屋号と共に「五」という字を受け継ぎ、私で3代目になる」現社長の話だった。

木曽の地で未だに家業が3代も続くのは珍しく、その中で全盛期にはたくさんあった製材所は数件となってしまったそう。

あれやこれやと手を出さず一貫して、天然木曽桧の製品にこだわり、桧専門とする会社であるから、これが強みだと感じた。

 

旅行好きの井上社長、全国各地を見て回り、伊勢神宮にも年に2回は行くそう。

おかげ横丁でみかける桶などの木工品の中には、他の地域の桧が使われていたりするが、神棚と言った特別な木工品は木曽材で作られ、お店においてあるとのこと。

 

木曽檜と式年遷宮

1300年前から続く伊勢神宮の式年遷宮の御用材に木曽檜が使われており、近年は第62回が平成17年から御神木祭・社殿建築祭・神遷祭と8年かけて行われました。

20年に一度、正殿を初めとする御装束神宝を新たに作り替え、大御神様に新宮へお遷りいただく祭。

お祭りの事の始まりは木曽の御杣山でから切り出す、御神木祭・御杣始祭から始まる。

 

正殿と御装束神宝などの調度品を20年毎に作り替えられたお蔭で、建築技術や調度品を作る技術が継承され、1300年も前から変わらず現代まで伝えられている。

作り替えられ古くなった正殿の木は、各地にある神社でご用材として再利用される。
木曽の檜は、伊勢神宮で20年働きさらに、各地の神社へ行き、伊勢神宮で経た年月より多く利用されるのかもしれない。

「伊勢神宮の御用材は、木曽桧材の代表的な使われ方である。そして、1300年の建築技術の継承のため、この重要な祭りを絶やすことなく『伊勢神宮 式年遷宮』がさらに20年後、そのまた20年後と続くことを願い期待する。

そして、御神木を切り出すことを可能としている豊かな木曽の山であり続ける事を、林業・建築関係者が一丸となって努力しなければならない。」

と井上社長の話は締めくくられた。

 

 

株式会社井上

長野県木曽郡上松正島町2-25
Tel / 0264-52-2546  Fax / 0264-52-4157